「今日は何だ？」
イシェが顔をしかめた。ラーンがテーブルの上に広げているのは、いつもよりみすぼらしい食料だった。硬そうなパンと、明らかに腐りかけの野菜。
「おいおい、イシェ。そんな顔をするなよ。今日は大穴が見つかる予感がするからな！ だから節約だ！」
ラーンは豪快に笑ったが、イシェは彼の笑顔を信じられなかった。彼らはここ数日、何も見つからず、食料も底をつきかけていた。
「大穴なんて見つかるとは思えないよ…」
イシェはため息をつきながら、腐りかけの野菜をひと切れ食べた。
「ああ、そうか。お前が言うなら仕方ないな。」
ラーンの顔色が曇った。彼はいつもそうだった。楽観的な態度の裏に、脆い自信が隠されているようだった。
その時、扉が開いた。テルヘルが、いつものように高慢な表情で入ってきた。
「準備はいいか？」
彼女の言葉は容赦なかった。イシェはテルヘルの冷酷な視線に耐えながら頷いた。ラーンも、いつも以上に緊張した様子だった。
「今日は、あの遺跡だぞ。あの日、ヴォルダン兵に見つかった場所だ」
テルヘルが言った。イシェは背筋が凍り付いた。あの遺跡は危険な場所として有名だった。
「あの遺跡には、何かあるらしい。お前たちも知ってるだろう？」
テルヘルは意味深な言葉を放った。イシェはラーンの顔を見た。彼の瞳は、燃えるような光を放っていた。
「大穴だ！」
ラーンが叫んだ。イシェは深くため息をついた。彼にはもう、何も言えなかった。
彼らは遺跡へと向かった。イシェの心は不安でいっぱいだった。今日の献立は、腐りかけの野菜と硬いパンだけだった。しかし、もしかしたら、この先には、もっと大きなものがあるのかもしれない。イシェはそう自分に言い聞かせながら、ラーンとテルヘルに続いた。