「おいイシェ、今日は俺が先頭だぞ!」
ラーンは、興奮気味に錆びた剣を手にした。ビレーの朝 sebelum fajarは冷え込んでいたが、彼の顔には熱気がみなぎっていた。
「また無駄な冒険だ」
イシェはため息をつきながら、革製の袋を肩から下ろした。中は細かな道具類で満たされていた。ラーンはいつもそうだが、計画性ゼロで危険ばかりが目につく遺跡を選んでしまう。
「今回は違うぞ!この遺跡は俺がずっと狙ってたんだ。古代の猫の神殿って書いてあるんだぜ!」
ラーンの目は輝いていた。イシェは彼の熱意に少しだけ心を動かされた。古代の猫の神殿、それは確かに興味深い話だ。
「でも、テルヘルは何を言っていた?」
イシェは念のため確認した。テルヘルはいつも冷静で、遺跡の調査結果を詳細に記した文書を持ってくる。彼女の情報は信頼できるものだった。
「彼女は、この遺跡には強力な呪いがかけられていると言ってたぞ」
ラーンの興奮が少し冷めた。呪いといえば、イシェにとっては避けたいものだ。
「でも、テルヘルも言っていただろ?この遺跡には貴重な遺物があるって。もし、呪いを解く方法を見つけられたら…」
ラーンの言葉は、イシェの心を揺さぶった。彼はいつも、大穴を掘り当てて大金持ちになるという夢を語っているが、イシェは彼が本当にそう思っているとは思わなかった。彼の目は、何かもっと深いものを求めているように見えた。
「よし、行ってみよう」
イシェは小さく頷いた。ラーンの後ろを歩きながら、彼女は小さな革製の袋から猫の毛糸の玉を取り出した。これは、テルヘルが渡してくれたものだ。
「幸運を祈るために」
テルヘルはこう言った。猫の毛糸の玉を握りしめると、イシェの心は少しだけ軽くなった。
遺跡の入り口に立つと、ラーンは興奮気味に剣を振るった。イシェは彼の背中に、そしてその奥にある古代の猫の神殿の姿を想像した。そこには何が待っているのか、誰も知らない。