ラーンの大斧が岩壁を叩き砕いた。埃埃が舞う中、イシェは眉間に皺を寄せながら狭い通路を見下ろした。「本当にここなのか? ラーン、地図をよく確認しろよ。」
「大丈夫、大丈夫! お前が言うほど狭くもないぞ。」ラーンは陽気に笑ったが、彼の顔にもわずかな緊張の色が浮かんでいた。テルヘルが提示した遺跡の場所を示す地図は曖昧で、彼らはすでに数時間、この険しい岩肌の間を進むことになっていた。
「狭いからって言うんじゃないわ!」イシェは声を荒げた。「この道、明らかに崩れかけてるじゃないか! ここで落石でもしたらどうなると思う?」
ラーンの笑顔が消えた。「そうだな…確かにここは危険だ。」彼は視線をテルヘルに向けた。「どうする? 後ろに引き返すか?」
テルヘルは静かに立ち尽くし、周囲を鋭い目で見渡していた。やがて彼女はゆっくりと口を開いた。「引き返さぬ。この遺跡には我々が探すものがある。危険は承知の上だ。」彼女の瞳には揺るぎない決意が宿っていた。
イシェはため息をつき、背筋を伸ばした。「わかった。行くけど、何かあったら責任はテラヘルが取るぞ!」
彼らは再び歩き始めた。狭い通路は彼らをまるで飲み込むかのように狭く、天井からは石灰岩の粉がパラパラと落ちてくる。ラーンの背中はテルヘルの指示に従い、常にイシェに道を譲りながら慎重に前進していた。だが、イシェの不安は増すばかりだった。
「ここ…本当に安全なのか?」彼女はつぶやいた。
「大丈夫だ。」ラーンは無理やり明るい声で言った。「もうすぐ出口だ!」
しかし、その言葉が彼らに希望を与える前に、突然、通路の上部から大きな音がした。石が崩れ落ち始め、ラーンの頭上に粉塵の嵐が巻き起こった。