ビレーの酒場「荒くれ者」の薄暗い店内、ラーンが豪快な笑い声を上げながら、イシェの制止を振り払うように大きな杯を傾けた。
「おい、イシェ！お前はいつも心配性すぎるぞ！あの遺跡のことだって、大丈夫だ。テルヘルさんが言うように、今回は大穴になるかもしれないって！」
イシェは眉間にしわを寄せながらラーンの肩を軽く叩いた。
「でも、あの遺跡は危険だって聞いたことがあるんだ。しかも、テルヘルさんの依頼はいつも高額だし、何か裏があるんじゃないかと不安になるんだよ。」
「心配しすぎだ！それに、高額な報酬がもらえるなら、危険と引き換えだとしても仕方ないだろう？」
ラーンの言葉にイシェはため息をついた。ラーンはいつも大金を夢見ており、そのために危険な遺跡探索を繰り返す。イシェはラーンのことを気にかけているが、彼の無謀さにいつも呆れ果てている。
「ラーン、あの遺跡に入る前に、もう一度計画を立て直すべきだ。」
その時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。黒曜石のような瞳に鋭い光を宿し、薄暗い店内に凛とした空気を持ち込んだ。彼女はテーブルに腰掛けると、ラーンとイシェを見据えた。
「準備はいいか？」
ラーンの顔は期待で輝いていたが、イシェはテルヘルの視線から何かを感じ取っていた。彼女の瞳の奥には、冷酷さと執念が渦巻いているようだった。イシェは不安を覚える一方で、テルヘルに抱く謎の感情も無視できないことに気がついた。
「さあ、出発だ。」
テルヘルは立ち上がり、ラーンとイシェに向かって手を差し伸べた。イシェは迷いながらも彼女の手に触れ、ビレーを出た。彼らは狭き門をくぐり抜け、未知なる遺跡へと足を踏み入れていく。