ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の背後でため息をついた。
「また大穴の話か? そんな夢物語をいつまで…」
ラーンの目は輝いていた。「今回は違う! この遺跡の地図を見たことがあるんだ。古代の王が眠る場所らしいぞ。そこには必ず大穴がある!」
イシェは諦めかけたその時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。「二人が熱心に議論しているとは珍しい。何か面白い話でも?」
ラーンの興奮を抑えきれず、遺跡の地図を広げた。「テルヘルさん、見てください! この場所が…」
テルヘルは地図をじっと見つめた後、ゆっくりと口を開いた。「王の墓か。確かに興味深い。しかし、危険度も高いだろう。慎重な準備が必要だ。」
ラーンの顔色が曇った。「準備? そんなものは…」
テルヘルは鋭い視線でラーンを見据えた。「準備とは、単に武器や食料のことではない。情報収集、戦略立案、そして…リスク管理だ。」
イシェがラーンの肩を叩いた。「テルヘルさんの言う通りだ。今回は慎重に進めよう。」
ラーンの表情は暗くなる。テルヘルは彼の不満を察した上で、こう言った。「私は結果にこだわる。成功のためには手段を選ばない。お前たちはそれに協力する覚悟があるか?」
ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。二人は、この遺跡探検が単なる冒険ではなく、ある種の運命の岐路であることを悟った。そして、その背後には、テルヘルの野望と影のある過去を感じた。
「わかった。準備を始める。」ラーンの声が決意に満ちていた。イシェは小さく頷き、テルヘルは冷ややかな微笑みを浮かべた。