「よし、今回はあの崩れた塔だな。地図によると奥深くに何かがあるらしいぞ」ラーンが目を輝かせ、イシェの肩を叩いた。イシェは眉間にしわを寄せながら地図を広げた。「またそんな危険な場所か? それに、あの塔はヴォルダンの兵士が頻繁に巡回しているって聞いたぞ」
「大丈夫、大丈夫!俺がいるんだから安心しろよ。それに、テルヘルさんが報酬を上げると言ってたよな?」ラーンは自信満々に胸を張った。イシェはため息をつきながら、地図をしまう。「わかったわ、でも今回は本当に気を付けてね。」
ビレーを出発した3人は、険しい山道を進んだ。廃墟になった村、枯れ果てた森、そして崩れた塔へと続く道には、ヴォルダンの圧政の影が深く暗い影として落ちていた。
「あの塔は独立前のエンノル連合の監視塔だったらしいな。ヴォルダンが侵攻してきてからは、兵士の拠点になったんだって」テルヘルが静かに言った。ラーンの顔色が少し曇った。「あの塔がまだ残っているのは、ヴォルダンがエンノルの歴史を忘れさせようとしている証拠なのかもしれない」
イシェはラーンの言葉を聞いた後、深く頷いた。「独立を目指す者たちにとって、歴史を守ることはとても重要だものね。」
塔に到着すると、崩れた石畳の上でヴォルダンの兵士たちが巡回しているのが見えた。テルヘルは鋭い視線で状況を判断し、「あの崩れた壁から侵入しよう。兵士たちの視界を遮れるはずだ」と指示した。
3人は慎重に壁の陰に潜り込み、塔の中へと進んだ。埃っぽい空気が立ちこめ、朽ち果てた石造りの階段が続く。
「ここはかつてエンノルの監視員たちが暮らしていた場所だ。独立を夢見ていた人々が」イシェは静かに呟きながら、壁に描かれたかすれた文字に触れた。「この塔は歴史の証人だ。ヴォルダンが奪ったもの、そしてエンノルが守るべきものを思い出させてくれる」
ラーンの心には、イシェの言葉が深く響いた。彼はかつて漠然と「大穴」を夢見て遺跡を探していたが、今は何か違うものに惹かれていることに気づいた。それは、この地に根付く独立への熱い思いだった。
塔の奥深くに進むにつれ、彼らを待ち受ける真実は、そして彼らの運命を変えるものとは?