「よし、今日はあの崩れた塔だな」
ラーンがそう言うと、イシェはため息をついた。
「また塔か…あの辺りはもう何度も探しただろう？」
「いや、あの塔の奥の方、まだ行ってないだろ？ 必ず何かあるはずだ！」
ラーンの目は輝いていた。イシェは彼の熱意を理解しようとしたが、結局いつも同じパターンだった。
「わかったわかった。でも今回は本当に last time だよ」
イシェがそう言うと、ラーンはニヤリと笑った。テルヘルは二人を見つめ、薄暗い表情で言った。
「この塔には何かあるはずだ。かつてこの地を支配した王国、アストリアの遺跡だとすれば…」
彼女は地図を広げ、指先で塔の位置を示した。イシェはテルヘルの言葉に少しだけ心が躍った。アストリアの遺跡なら確かに価値があるかもしれない。だが、同時に危険も増すはずだ。
「よし、行こう！」
ラーンが先に走り出すと、イシェは仕方なく後を追った。テルヘルはゆっくりと二人について行った。塔の入り口には崩れた石が積み重なっていた。ラーンは力強く石をどかし、中へと入っていった。イシェは彼の後をついて行くうちに、何かがおかしいことに気がついた。
「あの…ラーン、ここはいつもとは違う気がする…」
イシェが言うと、ラーンは振り返り、少しだけ不安そうな表情を見せた。
「ああ、確かに…静かすぎるな」
テルヘルは周囲を警戒しながら言った。
「ここはアストリアの遺跡だとすれば、罠が仕掛けられている可能性もある。注意深く行動する必要がある」
三人で塔の中を進んでいくと、壁には奇妙な絵画が描かれていた。イシェは絵画に目を凝らした。そこには、人間の姿をした影のような存在が描かれていた。
「これは…」
イシェは言葉を失った。ラーンも絵画をじっと見つめていた。その時、突然床が崩れ、三人は深い穴に落ちていった。
「うわああ！」
イシェは叫び声を上げた。暗闇の中、冷たい石が肌に突き刺さる感覚を感じた。そして、かすかに聞こえる声がした。
「ようこそ、アストリアの墓地に…」