「よし、今回はここだ！」ラーンが拳を握りしめると、イシェはため息をついた。「また、そんな大げさな場所か…」
ラーンの指差すのは、ビレーの郊外にある、崩れかけた石造りの塔だった。苔むした壁には奇妙な文様が刻まれ、その一部はすでに風化して読み取れないほどだった。
「あの塔は噂で危険らしいぞ」イシェが言った。「昔、そこで何かが起こったって言う話もあるんだ」
ラーンは意に介さない様子で、「そんなの気にすんな！宝があれば危険なんて関係ないだろう！」と豪快に笑った。彼の背後からテルヘルが冷たく言った。「宝？」彼女は鋭い視線でラーンの顔を見据えた。「君たちは一体何を望んでいるのか？金か？名誉か？」
ラーンは一瞬戸惑った後、いつものように明るく答えた。「もちろん、大穴だ！いつかあの伝説の大穴を掘り当ててやるんだ！」
テルヘルは苦笑した。「大穴…。面白い話だ。だが、君たちが本当に欲しければ、その「大穴」を独占できる方法がある」彼女は少しだけ声色を低くして言った。「遺跡の奥深くに眠る真実…それを手に入れるためには、君たちの力は必要不可欠だ」
ラーンの眉間に皺が寄った。「真実？何のことだ？」
テルヘルは答えなかった。ただ、ラーンとイシェを見据えながら、ゆっくりと塔に歩み始めた。その背中には、深い影が長く伸びていた。