「おいイシェ、あの石碑の模様、見たことあるか？」ラーンが指差す方向には、崩れかけた石碑が横たわっていた。イシェは眉間に皺を寄せながら、石碑に刻まれた複雑な模様を眺めた。「どこかで見たような気もするけど…、確かな記憶はないな」。
「よし、わかった！俺たちが最初に発見した遺跡の入り口に似てるぞ！」ラーンの顔色がパッと明るくなる。イシェはため息をつきながら、「また、あの迷路みたいなの？あの時は本当に危なかったよ、ラーン。あのトラップ、あと少しで…」
「大丈夫、今回は違うはずだ！ほら、テルヘルも言ってただろ？この遺跡には何か大きなものがあるって！」ラーンの瞳に光る確信がイシェを不安にさせた。テルヘルはいつも冷静沈着だが、最近何か追い詰められているような様子だった。ヴォルダンへの復讐心からか、それとも他の理由があるのか、イシェには分からなかった。
「よし、準備はいいか？」ラーンが剣を抜く。イシェも深呼吸をして、小さな短剣を手に取った。「よし、行こう」。三人は崩れかけた石碑の隙間から、遺跡へと入っていった。
暗い通路を進むにつれて、空気は重くなり、不気味な静けさに包まれた。イシェは背筋がゾッとする感覚に襲われた。いつもならラーンの無茶な行動にイライラしていたが、今回はなぜか不安が勝っていた。「何か変だな…」
すると、前方に光が見えた。三人が近づくと、そこには広大な地下空間が広がっていた。中央には巨大な石棺があり、その周りを奇妙な機械装置が取り囲んでいた。ラーンは目を輝かせ、「これは…！」と叫んだが、その時だった。
床から鋭い棘が飛び出し、ラーンを貫いた。イシェは悲鳴を上げようとしたが、言葉が出なかった。「ラーン！」イシェが駆け寄ると、ラーンの顔には苦痛の色が浮かんでいた。「イシェ…」ラーンの目はかすかに輝き、イシェに何かを伝えようとしたように見えたが、その声はすぐに絶えた。
「何だこれは…！」テルヘルが剣を抜いて機械装置を攻撃するが、全く効果がない。イシェはラーンの lifelessな瞳を見つめ、言葉を失った。そして、その時、テルヘルの声が冷たく響いた。「無駄だ、イシェ。ここは罠だった。お前も犬死にだ」。イシェは恐怖に震えながら、テルヘルと機械装置の赤い光に囲まれていくのを感じた。