ビレーの朝 sebelum matahari terbit. 空気が冷たく、ラーンの息が白く立ち上る。イシェは、いつもより早く準備を終えていた。今日はテルヘルとの約束の日だ。
「おい、イシェ。まだ寝ぼけてんのか?」ラーンが眠そうな顔で言った。「今日はテルヘルと遺跡行くんだぞ!早く準備しろよ!」
イシェはため息をつきながら、「もう準備できたわよ」と答えた。ラーンの無計画さに辟易しつつも、どこか頼りない彼を放っておけない自分がいた。
テルヘルは約束の場所に既に立っていた。彼女の鋭い眼光がラーンとイシェを刺すように感じられた。「今日はあの遺跡だ。準備はいいか?」とテルヘルは冷たく言った。
「もちろん準備万端だ!」ラーンの声が響く。イシェは、彼の言葉に少しだけ安心した。
遺跡への道は険しく、日差しが容赦なく照りつける。イシェは水筒から水を飲むラーンに、「もっとゆっくり歩こうよ」と声をかけた。「今日は特に危険な遺跡だと言ってたじゃないの」
「大丈夫だ、イシェ。俺には剣があるし、テルヘルもいるんだ!」ラーンの言葉に、イシェは少しだけ安心した。
遺跡の入り口には、奇妙な模様が刻まれた石碑が立っていた。テルヘルが石碑を指差した。「ここはヴォルダンとエンノル連合が争奪戦を繰り広げた場所だ。貴重な物資が眠っている可能性が高い」
ラーンの目は輝いた。「大穴が見つかるかも!」
イシェは、彼の興奮に少しだけ心を動かされた。遺跡の中に入ると、そこは暗く湿った空気が漂い、不気味な静けさだった。
「気をつけろ。罠が仕掛けられているかもしれない」テルヘルが低い声で言った。
彼らは慎重に遺跡の奥へと進んだ。壁には古びた絵画が描かれており、かつてここに栄えた文明を物語っている。イシェは、これらの絵画から何かを感じ取ろうとしたが、彼女の頭の中を占めるのはいつも物資のことだった。
「ここだ」テルヘルが立ち止まり、壁の一点を指さした。そこには、石で覆われた小さな扉があった。「この扉を開ければ、貴重な物資が入っているはずだ」
ラーンが剣を抜いて扉の前に立つと、テルヘルは「待て」と声をかけた。「扉を開ける前に、罠がないか確認しなければならない」
イシェはテルヘルの慎重さに少しだけ安心した。彼女は、ラーンの無計画さに疲弊していた。
扉が開くと、中には金貨や宝石が山積みになっていた。ラーンの目が輝き、興奮の声を上げた。イシェも、この光景に圧倒された。しかし、彼女の心の中には、物資以上に大切なものがあった。それは、仲間との絆であり、未来への希望だった。
「これで、私たちは自由に生きていける」ラーンは言った。イシェは彼の手を握りしめ、小さく頷いた。