「よし、今日はあの西の遺跡だな!」ラーンの豪快な声はビレーの賑やかな市場を一瞬で静かにした。イシェは眉間にしわを寄せながら、いつものように彼の計画性に欠けた行動にため息をついた。「また大穴の話か…」。
「今回は違うぞ! 今回は確実だ! この地図を見ろ!」ラーンは興奮気味にぼろぼろの羊皮紙を広げる。イシェが近づくと、そこには手書きで記された複雑な図形と、怪しげなシンボルが並んでいた。「何だこれ…?」イシェは首をかしげた。「テルヘルがくれた情報らしいぞ! 彼女も今回は期待してるみたいだ」ラーンの目は輝いていた。
「あのテルヘルか…」イシェは不安を感じた。テルヘルはヴォルダンへの復讐のため、遺跡探索に彼らを雇っていた。その目的にはどこか謎めいたものを感じていた。彼女の冷酷な顔と鋭い眼光は、いつもイシェを緊張させ、どこか引け目を感じさせた。
「よし、準備はいいか? 今回は大穴が見つかるぞ!」ラーンは剣を肩にかけ、イシェの制止を振り切って遺跡へと向かった。イシェは深くため息をつきながら、彼の後を追いかける。テルヘルの目的、そして自分たちの未来について、イシェは不安を感じながらも、どこかで希望を抱いていた。「大穴」が見つかるのか、それとも何か別のものに出会うのか…。ビレーの賑やかな市場を背に、3人は遺跡へと足を踏み入れた。