「おいラーン、あの石像、触るなよ。」イシェがラーンの腕を引き止めた。「あれ、なんか…不気味だな。」
ラーンは眉間に皺を寄せ、「またお前か？いつもそんなこと言うじゃないか。遺跡には宝がいっぱいあるって話だぞ！怖がるな！」と笑い飛ばした。だがイシェの顔色は青ざめていた。
「いや、違うんだ。あの石像…なんか…見てる気がするんだよ。」イシェは声に震えが走った。「あの目が…まるで生きているみたいで…」
ラーンの足取りは少し遅れた。確かに、石像の目は不気味なほどリアルに彫られていた。まるで、今にも動き出しそうな気がした。だが、ラーンはそんな不吉な予感は無視し、石像の近くまで歩み寄った。
「ほら見て、イシェ！この彫刻、すごいだろ？こんな技術、一体どうやって…」ラーンの言葉は途絶えた。石像の目の奥が赤く光り始めたのだ。そして、石像の口がゆっくりと開き始めた。
「やめろ！」イシェは叫んだが、ラーンはすでに石像に手を伸ばしていた。その瞬間、石像から不気味な声が響き渡った。「汝、誰だ？」
ラーンの顔色は真っ白になった。彼は自分の行動を深く後悔した。石像の呪い？それとも何か別の力？ラーンは恐怖で震え上がった。イシェは必死にラーンを引き戻そうとしたが、石像の力は強すぎる。ラーンの体はまるで石に固められるように硬直していった。
「待て！」テルヘルが駆け寄ってきた。「あの石像には物忌みがあるという噂を聞いたことがある。触るべきではない！」テルヘルは石像に向かって何かを唱え始めた。すると、石像の目は再び暗くなり、口も閉じてしまった。ラーンは硬直した状態から解放され、よろめきながら立ち上がった。
「どうしたんだ？」ラーンの顔にはまだ恐怖の色が残っていた。「あの石像…生きているのか？呪いなのか…」
イシェは深くため息をついた。「あの石像は触るべきではない。物忌みを犯した者には必ず災いが訪れるという…。」
ラーンは何も言わず、ただ石像をじっと見つめていた。彼は自分の無謀さを痛感していた。そして、この遺跡探索が彼らにどれほど多くの危険をもたらすのか、初めて理解したのだった。