「おい、イシェ、どうだ?今日はいい感じの予感がするぜ!」
ラーンが興奮気味に話しかける。イシェは、いつものように彼の無鉄砲さに呆れ顔で返した。
「またそんなこと言ってる。遺跡探索は運任せじゃないんだから」
だが、イシェ自身も内心では期待を禁じ得なかった。彼らは、ビレーの郊外にある小さな遺跡へと向かっていた。この遺跡は、かつてラーンの祖父が調査していた場所だ。
ラーンの祖父は、ビレーの開拓者の一人で、遺跡探しの名手だったという。彼が遺した記録によると、この遺跡には「父祖の遺産」と呼ばれる、莫大な財宝が眠っているらしい。
イシェは、ラーンの祖父の記録を疑う気持ちもあった。しかし、ラーンが遺跡探索に熱中する姿を見る度に、彼女の心にも希望が芽生えてくるのを感じた。
「よし!今日は必ず何かしら発見があるぞ!」
ラーンは、意気揚々と遺跡へと足を踏み入れた。イシェも彼に続くように遺跡の中へ入った。
遺跡内部は暗く湿っていた。壁には、何世紀も前に刻まれた文字がかすかに残っている。テルヘルは、懐中電灯の光を壁に当てながら、慎重に文字を追いかけていた。
「これは…古代ヴォルダンの文字だ」
テルヘルが呟くと、ラーンとイシェは息をのんだ。ヴォルダンとは、エンノル連合と対立する大国である。
「この遺跡は、ヴォルダンと何らかの関係があるのだろうか…」
イシェが不安そうに呟いた。
その時、ラーンの足元から何かが光り始めた。それは、小さな箱だった。ラーンが箱を開けると、そこには美しい宝石がぎっしり詰まっている。
「やった!大穴だ!」
ラーンの喜びの声が、遺跡内にこだました。イシェも思わず笑顔になった。だが、テルヘルの表情は硬いままだった。
「これは…父祖の遺産ではない」
テルヘルが言った。「これはヴォルダンが隠した財宝だ。そして、この遺跡には、さらに大きな秘密が眠っている」