「よし、今回はあの崩れかけの塔だ。地図によると奥に何かがあるらしいぞ」ラーンが目を輝かせながら遺跡の写真を見せた。イシェは眉間にしわを寄せた。「またそんな危険な場所？ 何回も言ってるだろう、あの塔は崩落寸前だよ。ましてやヴォルダンとの国境に近い場所で…」
「大丈夫だ、イシェ。今回はテルヘルが一緒だしな」ラーンは自信満々に笑った。テルヘルは静かに地図を指さした。「この塔にはかつて領主の墓があったと伝えられる。そこには彼の爵位を示す装飾品が残っているはずだ。それが我々の目標だ」
イシェはテルヘルの言葉に少し安心した。彼女の目的が明確で、行動も計画的であることは確かだった。だが、それでもヴォルダンとの国境に近い遺跡に挑むことに不安を覚えた。「本当に安全なのか…」と呟くと、ラーンはイシェの肩を叩いて笑った。「大丈夫だ、イシェ！俺たちが一緒にいればどんな危険も乗り越えられるぞ！」
「そうだな」テルヘルも口を開いた。「我々は互いに必要とされている。目標達成のためには協力するしかない」
その日から三人は塔へと向かった。崩れかけた石造りの階段を慎重に登り、埃っぽい部屋の中を進む。やがて、奥の部屋にたどり着くと、そこには黄金の棺が置かれていた。ラーンは興奮気味に棺を開けようとしたが、イシェが彼の手を掴んだ。「待て！何か罠があるかもしれない」
その時、壁から矢が射出された。ラーンは咄嗟に身をかわすも、肩に傷を負ってしまった。「くっ…！」ラーンの叫び声にテルヘルが素早く反応し、壁に隠れている敵を倒した。イシェはラーンの傷口を応急処置しながら「気をつけなさい！この塔は罠だらけだ」と警告した。
棺を開けた時、そこには領主の遺体ではなく、複雑な機械仕掛けと宝石が埋め込まれた奇妙な装置があった。テルヘルは目を輝かせた。「これは…！」彼女は装置を慎重に調べ始めた。
「これは何だ？」ラーンは好奇心に駆られて装置に触れようとしたが、イシェは彼を制止した。「待て！触るな！」その時、装置が突然光り始め、部屋全体を照らし出した。三人は目を細めて光を見つめた時、装置から声が響き渡った。それは古代の言語で書かれた警告だった。
「この爵位を欲する者には試練が与えられる…」