ラーンの大斧が石壁を叩き込んだ。埃が立ち込め、少し遅れて崩れ落ちる石の雨音が響いた。
「よし、開いたぞ！」
ラーンは得意げに笑った。イシェは眉間にしわを寄せながら、崩れた石を足でどける。「いつもこんな力任せな方法で…」と呟きながら、内部を覗き込んだ。薄暗い通路が奥へ続いていた。
「よし、行こう！」
ラーンは先陣を切って中へ入っていった。イシェはため息をつき、テルヘルに視線を向けると、彼女は冷静に周囲を見回していた。
「この遺跡は以前にも調査したことがある。記録によると、奥深くにはヴォルダン軍が使用していた施設があるはずだ。」
テルヘルの言葉にラーンは「またヴォルダンかよ…」と顔をしかめた。イシェは少しだけ彼の表情を but, いつも通りの明るい笑顔を取り戻すように、すぐに言った。「大穴が見つかるかもしれないぞ！諦めずに探そうぜ！」
彼らは遺跡の奥深くへと進んでいった。通路は狭く、天井からは鍾乳石が垂れ下がっていた。湿った空気と土の匂いが充満し、不気味な静寂が支配していた。
しばらく歩くと、壁に何やら奇妙な模様が刻まれていることに気づいたイシェが声を上げた。「これは…」
彼は指先で模様をなぞりながら言った。「ヴォルダン軍の紋章だ。そして…」
イシェは言葉を詰まらせた。壁には紋章だけでなく、爪痕のような深く切りつけられた傷跡が残されていた。それはまるで、何か巨大な獣が激しく抵抗した跡のようだった。
「これは…」
テルヘルは沈黙し、鋭い眼光で周囲を見回した。彼女の表情は普段以上に硬く、どこか不安げに見えた。ラーンの笑顔も少し薄くなり、イシェの心にも冷たい風が吹き抜けた気がした。彼らは無言で遺跡の奥へと足を進め、その背後には、深い闇と爪痕が残る壁が迫っていた。