ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。イシェは眉間にしわを寄せていた。「また大穴の話か？ ラーン、そんな夢を見ている暇があったら、今日の探索で手に入れた遺物を売って食料を買った方がいいんじゃないのか？」
「イシェ、お前はいつも面白ないなぁ！ 俺だって現実的なことを考えているぞ。いつかあの大穴を掘り当てたら、お前には好きなだけ宝石を買い与えるからな」ラーンは胸を張って言ったが、彼の目はどこか空虚だった。
イシェはため息をついた。最近、ラーンの様子がおかしいことに気づいていた。いつもなら遺跡探検の興奮で目を輝かせていたはずなのに、最近はどこか覇気がない。まるで夢を追いかけるよりも、何か別のものに心を奪われているようだった。
その日はテルヘルがいつもより早くビレーに戻ってきた。「情報を得たぞ」と彼女は言った。声は冷たく、表情は硬かった。「ヴォルダンが新たな遺跡を発掘したらしい。強力な魔物が封印されているという話だ。危険だが、そこには莫大な財宝がある可能性もある」
ラーンの瞳に火が灯った。「よし、行こう！ イシェ、準備はいいか？」イシェはラーンの様子を見て、何かを察していた。彼の目は爛熟した果実のように輝き、危険な魅力を放っていた。
「待て、ラーン。あの遺跡は危険すぎる。ヴォルダンが関与しているならなおさらだ」イシェの言葉にラーンは笑った。「大丈夫だ、イシェ。俺にはテルヘルがいるんだ」と彼は言った。テルヘルの鋭い視線を感じながら、ラーンはビレーから離れる決意をした。彼の心には、大穴よりも大きな欲望が芽生えていた。それは、爛熟した果実のように甘い誘惑だった。