灼熱の太陽が容赦なく降り注ぐビレーの外れ、遺跡へと続く道をラーンとイシェは歩いていた。いつも通りの荒涼とした風景だったが、今日は空気がどこか重く、静まり返っていた。
「なんか不気味だな」
イシェが小さく呟くと、ラーンは肩をすくめた。「気にすんな。きっと大穴が見つかる前兆だ」と強がるが、彼の声にも僅かに不安が混じっている。
今日はテルヘルからの依頼で、特に危険度の高い遺跡に潜る。彼女は最近、ヴォルダンに関する何らかの情報を得たようで、いつもより表情が硬く、口数も少ない。
遺跡の入り口は崩れ落ち、朽ち果てた石柱だけがかつての壮麗さを物語っていた。一歩足を踏み入れると、冷たい空気が肌を刺すように感じられ、視界は薄暗い闇に覆われた。
「いつもよりひどい雰囲気だな」
イシェが呟く。ラーンの懐中電灯の光が壁に当たると、そこに奇妙な模様が浮かび上がる。まるで生き物のように蠢いているようにも見え、不気味な美しさを持っている。
「何だこれは…」
ラーンが近づこうとすると、イシェは彼の腕を掴んだ。「待て!何か変だ」
その時、壁から突然、黒煙のようなものが湧き上がり、二人を包み込んだ。視界が遮られ、耳をつんざくような甲高い音が響き渡る。
「ラーン!」
イシェの叫び声がかすかに聞こえた後、全てが静寂に包まれた。
しばらくして、意識を取り戻したラーンは、目の前が真っ白な空間になっていることに気がついた。
「ここは…?」
彼は立ち上がり、周りを見回すと、そこには広大な地下空間が広がっていた。天井から伸びる巨大な柱や壁には、複雑な模様が刻まれており、まるで古代文明の都市のようだった。
「イシェ!テルヘル!」
ラーンは叫んだが、返事はなかった。彼は一人、この未知の世界に立ち尽くされていた。そして、彼の心には、不安ではなく、どこか期待のようなものが芽生えていた。
この遺跡は、彼らの人生を変える何かを秘めているのだろうか?