ラーンが興奮気味に遺跡の入り口を指差した。「ほら、イシェ!今回は絶対何かあるぞ!」イシェは眉間にしわを寄せながら地図を広げた。「またしても、ラーンの勘違いだな。ここには何も記されてない。」
「でもって、あの石畳の模様!古代文明の印章じゃないか?」
イシェはため息をついた。ラーンの古代文明への執念は、まるで子供の空想話みたいだった。しかし、ラーンの瞳が輝き、興奮気味に遺跡の中へ飛び込もうとする姿には、いつもどおり心を揺さぶられた。「よし、わかった。今回は君の言う通りだ。ただし、危険を感じたらすぐに引き返すぞ。」
テルヘルは後ろから冷静な目で二人を見つめていた。彼女の目的は遺跡の探索ではなく、ヴォルダンに復讐するための手がかりを得ることだった。ラーンの無謀さは時に邪魔になるが、彼の行動にはある種の予測不能性があり、それが彼女の計画に活かせることもあった。
「さあ、中へ入れ!」ラーンが石畳を踏みしめると、突然床が沈み始めた。「うわぁ!」ラーンの絶叫が響き渡った。イシェは驚愕してラーンを見つめると、すぐに落ち着いて足場を探し始めた。「ラーン!大丈夫か!?」
「くそっ!何だこりゃ!」ラーンの頭から下半身が石畳に埋まってしまった。「助けてくれ!」
イシェは必死にラーンの腕を掴んで引っ張り上げた。しかし、ラーンの重みに耐えきれず、自分も一緒に崩れ落ちそうになった。その時、テルヘルが駆け寄り、イシェの腕をつかんだ。「落ち着け、イシェ!私はラーンを引き上げるから、お前は安全な場所に移動しろ!」
テルヘルは驚異的な力でラーンの体を持ち上げ始めた。その力強さに、イシェは思わず息をのんだ。そして、ラーンの顔を見た瞬間、彼は大口を開けて笑い声をあげていた。「ハハハ!面白い!これは面白いぞ!」
イシェは呆れた。「ラーン!今そんな余裕があるのか?」
「いや、でもさ、見てみろよ!この穴!まるで巨大な獣の口みたいじゃないか!?まるで俺たちを飲み込むように!ハハハ!」ラーンの笑い声は、崩れ落ちる遺跡の中で不気味に響き渡った。イシェは苦笑しながら、テルヘルに感謝の言葉を述べた。「ありがとう、テルヘル。ラーンには本当に助けが必要みたいだ。」
テルヘルは冷静な表情で言った。「彼を助けたのは、あくまで目的のためだ。彼の無謀さは、時に利用価値がある。」そして、崩れゆく遺跡の奥へと進んでいった。イシェはラーンの笑い声を聞きながら、複雑な感情を抱きつつも、彼とテルヘルの後を追いかけることにした。