ラーンの大 hammer が、石壁を砕く音と共に埃を巻き上げた。薄暗い遺跡内部を照らすイシェのランタンの光が、粉塵舞う中で不気味に揺らめいた。
「よし、ここだな！」
ラーンは興奮した様子で、崩れた壁の隙間を覗き込んだ。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の後ろから慎重に様子を伺った。
「またか…」
イシェの言葉にラーンの顔が曇る。「何だ、イシェ？また大穴だと騒いでいるんじゃないだろうな？」
「そうじゃないんだけど、あの…。」イシェは言葉を濁した。「あの遺跡の噂、聞いたことあるのか？」
ラーンの表情が一瞬硬くなる。「ああ、ああ。知ってるよ。ヴォルダン軍が…。」
彼は言葉を飲み込んだ。ヴォルダン軍による遺跡略奪事件は、ビレーにも暗い影を落としていた。その事件でイシェが深く傷ついたことも、ラーンはよく知っている。
「でも、大丈夫だ。僕たちにはテルヘルがいるんだろ？あの女なら、ヴォルダンも怖くない！」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。テルヘルは確かに強かった。冷酷なまでに目的を追求するその姿は、時には恐ろしくさえあった。しかし、イシェはどこかで彼女の燃えるような復讐心から逃れたいという気持ちを抱いていた。
「よし、行こう！大穴が見つかる予感がするぞ！」
ラーンが再び hammer を振り上げると、イシェは小さく頷いた。二人はテルヘルの指示に従い、遺跡の奥深くへと進んでいった。
埃っぽい空気を吸い込みながら、イシェは背後から聞こえるラーンの足音に耳を傾けた。その音が、まるで燃え盛る炎のように、彼女の中に不安と期待の火種を燃やし続けていた。