ビレーの薄暗い酒場では、ラーンが豪快に笑い声をあげた。イシェは眉間にしわを寄せていた。「またそんな無茶な話をしてるよ、ラーン。あの遺跡は危険だって聞いたぞ」。ラーンの肩を叩きながら、イシェは続けた。「あのテンプルの奥深くには、何がいるって噂だったんだろ?お化けか何かじゃないのか?」
ラーンの笑顔は崩れなかった。「そんなもの怖くないさ、イシェ!俺たちなら大丈夫だ。それに、テルヘルさんがいるじゃないか」。彼は自信ありげに言った。「あの遺跡にはきっと大穴があるはずなんだ。今回は必ず手に入れるぞ!」
イシェはため息をついた。「ラーン、いつもそう言うよ。でも結局、ただの石ころばっかり見つけるんだろ?」
「違うって!今回は違う!」ラーンは熱く語った。「テルヘルさんが言ったんだ。あの遺跡には、ヴォルダンに奪われたものがあると。それが何なのかは分からないけど、きっと価値のあるものなんだ」。彼の瞳は燃えるように輝いていた。
イシェはラーンの様子を見て、少しだけ心が揺さぶられた。ラーンの熱意と、テルヘルの言葉が、彼女の心にわずかな希望を灯していたのだ。「よし、わかったよ、ラーン。今回は付き合おう」と、イシェは言った。
「やった!イシェ、お前は最高だ!」ラーンは喜びの声を上げた。
しかし、イシェの心には、一抹の不安が残っていた。テルヘルがヴォルダンに奪われたものを探し求めていることは確かだった。だが、その目的は何なのか?そして、本当にラーンの言うように、大穴が見つかるのか?熟考を重ねても、答えは見つからない。彼女はただ、ラーンの笑顔と、テルヘルの冷たい視線を感じながら、不安を抱えたまま遺跡へと向かうことになった。