ラーンが石を蹴飛ばすと、イシェの眉間にしわが寄った。「またか？」とため息をつきながら、彼女は小さな革袋から粉末状の薬草を取り出した。
「落ち着け、イシェ。ただの石だ」ラーンは笑って肩を叩いた。「それに、あの遺跡に入る前に、お前も俺も緊張してるだろ？ だから少し気が散らすんだ」
イシェはため息をつきながら、粉末を水で溶かし、ラーンの傷口に塗った。「緊張しているのはわかるけど、そんなことで怪我をする必要はないわ。特に今回はテルヘルが絡んでいるんだから」
「ああ、あの女のことか。」ラーンは苦笑した。「確かに怖いけど、報酬もいいし、あの遺跡には何か大きなものがあるって言ってんだろ？ 今回の探索でついに大穴が見つかるかもしれないぞ！」
イシェは何も言わずに、傷口を丁寧に包帯で巻いた。彼女はラーンの楽観的な性格を理解していた。しかし、彼の無謀さは時に彼女を不安にさせた。特に今回はテルヘルが絡んでいるため、その不安は大きかった。
テルヘルは冷静で計算高い女性だった。だが、その瞳には深い憎しみと復讐心が渦巻いていた。彼女はヴォルダンへの復讐を果たすために、あらゆる手段を使うだろう。そして、ラーンとイシェもその道具にされてしまうかもしれない。
「準備はいいか？」テルヘルが鋭い視線で二人を見下ろした。背後には広がる遺跡の入り口。そこには未知なる危険と、もしかしたら大穴への道が待っている。
ラーンは剣を構え、イシェは小さな daggersを手に取った。二人は互いに頷き合った。そして、テルヘルの後ろをついて、遺跡へと足を踏み入れた。