ラーンの大いなる豪語とイシェの鋭い視線が交錯する。目の前には、埃っぽい石畳に覆われた遺跡の入り口があった。いつも通りラーンは、「今日は必ず大穴が見つかる！」と胸を張るが、イシェは眉間にしわを寄せていた。「またあの話か…」と呟く彼女の言葉は、ラーンの耳には届かなかった。
彼らはテルヘルに従って、この遺跡に足を踏み入れたのだ。テルヘルはヴォルダンへの復讐のために、遺跡の奥深くにあるという伝説の遺物を求めていた。その目的を達成するために、彼女はラーンとイシェの力が必要だった。だが、テルヘルの目的も、彼女が語る物語も、ラーンにはよく分からなかった。
「おい、イシェ、お前は一体何を探しているんだ？」
イシェはラーンの問いかけに小さくため息をついた。「あなたが探すものと同じものを探しているのよ。大穴を」
ラーンの顔色が一瞬曇る。「いや、違う…俺は大穴を見つけるためにここにいるんだ。お前もそうだろう？」
イシェは何も言わず、ただ静かに遺跡の奥へと進んでいった。彼女はラーンの言葉に、煮詰まったような焦燥感を感じていた。彼にはまだ理解できない、彼女自身の苦悩があったのだ。
テルヘルは先頭を走り、複雑な通路を軽々と進んでいた。彼女の背中には、復讐への執念が燃え盛っていた。それは、ラーンやイシェには想像もつかないほどの、深い闇だった。
「ここだ」
テルヘルの声が響き渡り、彼らは広大な地下空間へとたどり着いた。そこには、巨大な石棺が安置されていた。テルヘルは興奮した様子で石棺に近づき、ゆっくりと蓋を開け始めた。その瞬間、石棺から禍々しい光が放たれ、空気を震わせた。ラーンは思わず目を背ける。イシェも緊張を隠せない。
「ついに…」
テルヘルの声は震えていた。彼女は石棺の中に手を伸ばし、何かを掴もうとした。その瞬間、床が崩れ始め、彼らは奈落へと吸い込まれていく。
「待て！」
ラーンの叫びは、闇の中へと消えていった。