「おい、イシェ、見てみろよ!これぞ大穴への第一歩だ!」ラーンが興奮気味に巨大な石の扉を指さす。イシェは眉間にしわを寄せた。「またかよ、ラーン。そんなこと言ってる暇があったら、あの崩れかけた壁の方を見てくれよ。もしあの石が落ちたら、僕たちはもう二度と太陽の光を見られないぞ」
「大丈夫だ、大丈夫!イシェはいつも心配性だな。ほら、この扉を開けばきっと何か凄いものが見つかるはずだ!古代の宝箱とか、魔法の剣とか…」ラーンは目を輝かせながら石を蹴り飛ばした。イシェはため息をつきながら、テルヘルの方を見た。「どうする、テルヘルさん?」
テルヘルは冷静に状況を分析していた。「確かにこの扉は興味深い。だが、イシェの言う通り、安全確認が先だ。ラーン、少し落ち着いてくれ」
「分かった分かった。でも、早く見たいんだ!」ラーンの興奮は冷めやらなかった。イシェは諦めたように肩を落とした。
テルヘルは石畳に刻まれた複雑な模様を見つめていた。「この遺跡の構造は独特だ。恐らくこれは単なる墓所ではないだろう。何か重要な秘密が隠されている可能性が高い」
「秘密か…」ラーンの目は再び輝き始めた。「よし、開けてみよう!イシェ、力を貸してくれ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンと一緒に扉を押した。重いがゆっくりと扉が開き始めた。その隙間から差し込む光が、埃っぽい空気を照らした。
「わぁ…」ラーンの声にテルヘルも目を丸くした。そこには広大な地下空間が広がっていた。壁面には複雑な模様が描かれ、中央には巨大な石柱がそびえ立っている。まるで古代文明の祭壇のようだった。
「すごい…!」ラーンは興奮を抑えきれずに叫んだ。イシェも言葉を失い、テルヘルは冷静に状況を把握しようと努めた。しかし、その瞬間、地面が激しく震えた。石柱が崩れ始め、天井から岩が落下してきた。
「逃げろ!」テルヘルが叫んだ。ラーンとイシェは一瞬躊躇したが、すぐに後退し始めた。だが、すでに遅かった。崩れ落ちる石柱の下敷きになりそうになったイシェをラーンが咄嗟に抱き寄せた。その瞬間、岩が二人の上に落ちてきた。
「ラーン!」テルヘルが叫んだ。埃が立ち込める中、ラーンの姿は見えなくなった。イシェは意識を失いそうだった。「ラーン…!」
その時、イシェの耳元で声が聞こえた。「大丈夫だ…イシェ…」
イシェは目を覚ました。ラーンの顔があった。彼は傷だらけだったが、生きていた。
「お前が…助けたのか?」イシェが驚いて言った。ラーンの顔は赤くなっていた。「いや…あの、ただの反射動作だったんだ…照れ臭いから早く起きろよ…」ラーンは顔をそむけ、小さく咳払いをした。イシェは彼の姿を見て、何か温かいものを感じた。
テルヘルは冷静に状況を分析した。「ここはもう安全ではない。すぐに避難しよう」三人は崩れた遺跡から脱出し、近くの森へと逃げ込んだ。