ビレーの喧騒を背に、ラーンはイシェに声をかけた。「今日はあの遺跡だな、イシェ。テルヘルが言ってた大規模な遺物があるって聞いたぞ!」
イシェは地図を広げながら、「あの遺跡は危険だって聞いたよ。ヴォルダンの兵士が以前から調査してて、何かしらの罠があるらしい」と冷静に言った。ラーンは「そんなの気にすんな!テルヘルが言うなら大丈夫さ。それに大穴が見つかったら俺たちの人生変わるんだぞ!」と豪快に笑った。
遺跡への入り口は崩れかけており、埃っぽい空気が立ち込めていた。テルヘルが先頭に立ち、剣を構えながら慎重に進んだ。ラーンの背後からイシェが呟いた。「ここは以前、ヴォルダン軍に襲撃された場所らしい。生き残った兵士の証言によると…」
イシェの言葉を遮るように、目の前に広がる光景に3人は息をのんだ。巨大な石造りの部屋で、中央には古代文明の機械が複雑に組み合わされていた。まるで巨大な心臓のように脈打つ光が、部屋全体を照らし出していた。
「これは…!」テルヘルは目を輝かせながら、機械の周りを歩き始めた。「ヴォルダンが探している遺物だ!これが手に入れば…」
その時、機械から激しい振動が走り、床が割れて崩れ始めた。ラーンはイシェを引っ張り、「逃げろ!」と叫んだ。
崩落する遺跡の中で、テルヘルは機械に手を伸ばそうとした。「待て、テルヘル!危険だ!」ラーンの叫びは届かなかった。彼女は機械に触れた瞬間、強烈な光が周囲を包み込み、激しい熱風が吹き荒れた。
イシェは目を閉じたまま、熱い風を肌で感じた。そして、ゆっくりと開けてみると、そこは一面の焦土だった。遺跡は完全に焼失し、テルヘルの姿はなかった。ラーンの顔には絶望の色が浮かんでいた。「テルヘル…!」
イシェは静かに立ち上がり、崩壊した機械の残骸を見つめた。機械の上部には、わずかに残された灰と、テルヘルの小さなアクセサリーが落ちているのが見えた。イシェはアクセサリーを拾い上げ、ポケットにしまった。ラーンがまだ悲しみに暮れている中、イシェは決意を固めた。「俺たちが、テルヘルの意志を継いで、ヴォルダンを倒すんだ」と。