「よし、今回はあの崩れた塔だな」ラーンが、イシェに見せる地図を指さした。イシェは眉間にしわを寄せた。「また遺跡?ラーン、いい加減にしろよ。日銭稼ぎにばかり気を取られてるんじゃないだろうな。あの塔、危険だって噂じゃ…」
「大丈夫大丈夫、イシェ。俺が先頭に立って開拓するから」ラーンは自信満々に笑った。だが、彼の目はどこかそわそわとしていた。実際、その塔は周辺住民の間では「呪われた場所」と呼ばれ、近づく者たちに災厄をもたらすと言われているのだ。
「…わかったわ」イシェはため息をつきながら、準備を始めた。テルヘルは背後から静かに彼らを見つめていた。彼女の視線は冷たく、まるで氷のように鋭い。ラーンの無謀さに苛立ちを覚える一方で、彼の行動にはある種の期待も抱いていた。
三人は塔へと向かった。崩れかけた石畳の上を慎重に進む。薄暗い通路を抜けると、広くて高い内部空間が広がっていた。壁一面には、何かの文字が刻まれていた。イシェは緊張した表情で壁の模様を調べ始めた。「これは…古代語だ」
その時、突然、床から黒い煙が噴き出した。ラーンが驚いて後ずさると、足元が崩れ、彼は深い穴に落ちてしまった。イシェは驚愕し、テルヘルは冷静に状況を見極めた。「ラーン!」イシェの声が塔の中にこだました。
「心配するな、イシェ。俺は大丈夫だ!」ラーンの声が遠くから聞こえてきた。だが、彼の声には不安と恐怖が混じっていた。
テルヘルは冷静に状況を分析した。この塔には何か邪悪な力があるように感じられた。そして、その力は、無辜のラーンを狙っているようだった。彼女は決意した。どんな犠牲を払っても、ラーンを救い出す。たとえそれが、ヴォルダンへの復讐を遅らせることになっても。