「おい、イシェ、どうだ？あの石碑、何か刻まれてないか？」ラーンが興奮気味にイシェの肩を叩きながら遺跡内の奥深くへと続く通路を指さした。
イシェは眉間にしわを寄せつつも、ラーンの熱意には逆らえない性格だった。「また無茶なことを言ってるんじゃないでしょうね。あの石碑は明らかに崩落で埋まっているし、触れるのも危ないでしょう。」
ラーンはイシェの言葉に耳を貸す気配もなく、既に石碑の脇へ駆け寄ろうとしていた。「そんなこと言わずに手伝ってくれよ！もしかしたら大穴を示すヒントが刻まれてるかもしれないんだぞ！」
テルヘルは冷静に状況を見極めていた。ラーンの行動は危険だが、彼の持つ直感には時折驚くような洞察があることも知っていた。しかし、今はこの遺跡探索の目的から逸脱した行動を控えるべきだと判断した。「ラーン、落ち着いて。我々の目的は遺物だ。石碑に夢中になって時間を無駄にする必要はない。」
ラーンの動きが止まった。「そうだな、確かに。でも、あの石碑…何か引かれるものがあるんだ。」彼は再び石碑の方を向いたが、テルヘルが彼の視線を遮るように立ちふさがった。
「我々は時間がない。次の探索地点へ移動しよう。」テルヘルは冷徹に言った。ラーンの視線は石碑から離れず、何か言おうとしたものの、結局は言葉にしなかった。イシェはラーンの様子を心配そうに眺めていたが、テルヘルの強い意志の前に従うしかなかった。
彼らは遺跡の奥へと進んでいった。ラーンの目はまだ石碑に留まっており、彼の心には何かが引っかかっているようだった。しかし、その気持ちは無視され、彼らを待ち受ける運命へと突き進めていく。