「本当にここなのか？」イシェが眉間に皺を寄せながら、薄暗い遺跡の入り口を見つめた。壁には崩れかけた石碑が並び、何かの文字が刻まれているようだが、ほとんどが風化して判読不可能だ。ラーンはいつものように Carefree に肩をすくめた。「おい、イシェ、大丈夫だろ？俺たちにはテルヘルが案内してくれるんだから」と笑った。
「でも…」イシェは言葉に詰まった。「あのテルヘルは、本当にここに何かがあるって信じてんだろか？」彼女は振り返り、背後から続くテルヘルの姿を見つめた。黒曜石のような瞳は、わずかな光さえも飲み込んでしまう深淵のように、底が見えない。その視線は、まるで遺跡の中を貫く鋭いレーザーのようだった。
「ああ、彼女は信じておる」ラーンがイシェの肩を叩いた。「それに、あのテルヘルが言うなら間違いないだろう？俺たちはもう、彼女に何度も助けられたよな？」
イシェはため息をつき、懐から小さなランタンを取り出した。その火が揺らめく中、彼女は再び石碑に向かった。「よし、探してみよう」と呟いた。「もしかしたら、何か見つかるかもしれない…」
テルヘルは、二人の後ろをゆっくりと進んだ。彼女の足取りは静かで、まるで影のように壁に溶け込んでいるようだった。彼女にとって、この遺跡は単なる古代の遺物ではなく、ヴォルダンとの因縁を象徴する場所だった。そして、その因縁を断ち切るための鍵が、ここにあるはずだと信じていた。
彼らは遺跡の中へと進んでいった。通路は狭く、天井は低く、湿った空気が重くのしかかっていた。壁には奇妙な模様が描かれており、まるで警告のように見えた。ラーンは軽快に歩を進め、時折石を蹴飛ばして音を立てた。イシェは彼とは対照的に慎重に足取りを運び、周囲を警戒していた。
「おい、イシェ、どうしたんだ？怖くなったのか？」ラーンの声が響いた。「ほら、こんな場所に来ても、大穴が見つかるかもしれないぞ！」
イシェは苦笑した。「大穴なんて、きっとここにはないわよ」と答えた。「それに、この遺跡は何か不気味だもの。まるで…無粋な空気に満ちているのよ」
彼女の言葉に、ラーンは一瞬だけ表情を曇らせた。しかし、すぐにいつもの笑顔を取り戻し、「そんなこと言わないでよ、イシェ！」と明るく笑った。「ほら、テルヘルもここに何かがあるって言うんだろ？きっと、何か面白いものが見つかるぞ！」
テルヘルは、二人の後ろから静かに続く。彼女の瞳は、遺跡の奥深くに沈んでいくように、暗闇の中に消えていった。