「おい、イシェ!早くしろよ!」
ラーンが石を蹴り飛ばし、不機嫌そうに言った。イシェは慎重に足場を確かめながら、彼より遅れて遺跡の奥深くを進んでいた。
「ここは崩れやすいから気をつけないと…」
「そんなこと言ってると日が暮れるぞ!早く遺物を見つけないとテルヘルが怒るよ」
ラーンはそう言うと、剣を手に先へ進んでいった。イシェはため息をつきながら、彼の後を追った。
遺跡の奥深くでは、埃っぽい空気が静かに漂い、かすかな光だけが彼らを照らしていた。壁には奇妙な模様が刻まれており、何かの物語を語りかけているようだった。
「おい、イシェ、見てみろよ!」
ラーンの声が響き渡った。イシェが駆け寄ると、ラーンは興奮した顔で、小さな石棺を指さしていた。
「これは!?」
イシェが近づくと、石棺の表面に複雑な文字が刻まれていた。
「こんなの見たことない…」
イシェは慎重に棺を開けようと手を伸ばした。その時、背後から声が聞こえた。
「待て!」
テルヘルが駆け寄ってきた。彼女の目は鋭く光り、緊張した様子だった。
「この棺に触るな!危険だ」
ラーンは不満そうに言った。「何で?宝箱を開けちゃダメなのか?」
テルヘルは深呼吸し、冷静に説明した。
「この遺跡の伝説を聞いたことがあるか?ここに眠るものは、単なる遺物ではない。強力な魔力が宿っているという…」
イシェは驚いて、石棺から手を引いた。「そんな…」
ラーンの顔色が変わった。「おい、テルヘル、そんなこと言っても…」
「黙れ!」
テルヘルの声は冷たかった。「この遺跡には危険が潜んでいる。我々は目的を達成するためにここに来たのだ。無闇な行動は禁物だ」
ラーンは意地悪そうに言った。「わかったわかった。でもさ、もし宝が入ってたらどうするんだ?」
テルヘルは少しだけ微笑んだ。「宝?そんなもの興味ないわ。私が求めているのは…」
彼女の目は遠くを見つめた。
「ヴォルダンへの復讐だ」