「おい、イシェ、準備はいいか?」ラーンが陽気に声をかけると、イシェはため息をついた。
「いつも通り準備万端よ。でも、本当にあの遺跡に行く必要があるのかしら? 危険だって言ってたじゃないの」
「大丈夫だ! 僕には hunch があるんだ!」ラーンは自信満々に胸を張った。「あそこに大穴があるって感じるんだ!」
イシェは眉をひそめた。ラーンの「hunch」は、たいてい行き詰まりや怪我に繋がるものだった。特に今回はテルヘルが加わってから、危険度が格段に上がっているように感じた。
「準備はいいぞ」テルヘルは鋭い目で二人を見下ろした。「あの遺跡にはヴォルダンが欲しがっているものがある。それを手に入れるために、我々は協力するのだ」
ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダンか…あの大国に絡んでくるのか…」
「お前らには関係ない。ただ従え」テルヘルの言葉は冷たかった。
遺跡の入り口には、崩れかけた石碑が立っていた。「無礼な書き込みばかりだな」ラーンが苦笑しながら石碑に触れると、イシェは背筋を凍りつかせたような感覚に襲われた。
「何か変…」
「何だ?」ラーンの問いかけに、イシェは言葉を失った。石碑から、不気味な影がゆっくりと広がり始めていたのだ。
「おい、待て!」ラーンの叫びが、闇の中に消えていった。