「よし、ここだ!」ラーンの豪快な声で遺跡の入り口が見つかった。イシェは眉間に皺を寄せながら周囲を見回した。確かに崩れかけた石畳と、かすかに残る壁画が遺跡の存在を示しているものの、どこか不気味に静まり返っていた。
「ここは…なんか変だぞ」
ラーンの無邪気な笑顔とは裏腹に、イシェは本能的な不安を感じていた。テルヘルは冷静に周囲を警戒しながら言った。「念のために、少し離れた場所から様子を見よう」
だが、ラーンはそんな言葉も聞かず、興奮気味に遺跡内部へと飛び込んでいった。イシェはため息をつきながら、テルヘルに頷くと後を追った。
遺跡の奥深くへ進むにつれて、不気味な静寂が重くなり、空気が冷たくなっていくのが感じられた。壁には奇妙な模様が刻まれており、イシェは背筋を寒くさせるような予感がした。
「おい、ラーン!待て!」
しかしラーンの姿はもう見えなくなっていた。イシェとテルヘルは互いに顔を見合わせ、不吉な予感を抱きながら進んでいった。
すると、突然、壁の奥から不気味な光が放たれた。その光はまるで生きているかのように脈打つように輝き、周囲の石を赤く染めていく。ラーンの絶叫が響き渡る中、イシェとテルヘルは恐怖に慄きながら振り返った。
そこには、巨大な怪物のような影が立ち尽くしていた。無数の目が光り、鋭い牙を剥き出しにして、ラーンに向かって襲いかかろうとしていた。
「ラーン!」
イシェは反射的に剣を抜こうとしたが、足元が崩れ、転倒してしまった。その時、テルヘルが素早く動き、影に飛び込んだ。
「イシェ、逃げろ!」
テルヘルの叫び声が響き渡る中、イシェは立ち上がり、恐怖で体が震えながらも遺跡から逃げることを決意した。振り返ると、テルヘルとラーンの姿が見えない。
その時、イシェは、自分の無知さが招いた事態を痛感し、絶望に打ちひしがれた。