「よし、ここだな！」ラーンが剣を地面に突き立て、熱を帯びた目で遺跡の入り口を見つめた。イシェは眉間にしわを寄せながら、周囲を警戒した。「ちょっと待ったい、ラーン。あの崩れかかった壁、よく見てみろよ。」「ああ、どうせ rubble だろ？気にすんな」ラーンはそう言って既に遺跡内部に足を踏み入れていた。イシェはため息をつきながら、テルヘルに視線を向けた。「彼には無理だ。いつも無茶ばかりするから…」
テルヘルは静かに頷き、薄暗い遺跡の奥へと続く通路を指さした。「では、私達も準備を整えましょう」と。彼女は小さな革袋から何かを取り出した。イシェが目を凝らすと、そこには奇妙な形をした水晶が複数入っていた。テルヘルの口元がわずかに歪んだ。「これはヴォルダンに奪われた遺物の一部だ。今回はこれを利用して、あの遺跡の奥にある部屋にたどり着きたい」
「ヴォルダンの遺物か…」イシェは不吉な予感を覚えた。ラーンには何も言わず、テルヘルと共に水晶を手に取り、遺跡の中へと進んでいった。
深い闇の中、彼らは水晶の光を頼りに進んだ。崩れかけの石畳の上を進み、何段階も続く階段を登っていくと、ついに巨大な扉にたどり着いた。扉には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのように脈打つように輝いていた。「ここだ…」テルヘルが水晶を扉に向け、力を込めて押し付けた。すると扉は轟音と共に開かれ、その向こうには広大な部屋が広がっていた。
しかし、そこには何もなかった。空っぽの部屋に、わずかに埃が舞うのみだった。ラーンは肩を落とした。「おい、何だこれは？大穴じゃねえな…」イシェも失望した表情で、テルヘルを見つめた。「一体、何が…？」
その時、床から不気味な音が響き渡った。それはまるで、何かがゆっくりと這い上がる音だった。イシェは背筋がぞっとする感覚に襲われた。ラーンの顔色が青ざめ、テルヘルは鋭い眼光で周囲を警戒した。だが、その音は次第に大きくなり、ついに壁を破り、巨大な影が部屋の中に姿を現した。それは何とも言えない不気味な形相をした怪物だった。
「ああ…」イシェは言葉を失った。ラーンは剣を抜こうとしたが、すでに手遅れだった。怪物は彼らに向かってゆっくりと歩み寄り、その無様な姿に、三人は恐怖で息を呑んだ。