「よし、今回はあの崩れかけた塔だ。噂によると、奥深くにはヴォルダンの兵士が捨てた武器庫があるらしいぞ」。ラーンは目を輝かせながら、イシェの肩を叩いた。
「またも噂話に踊らされてるんじゃないわよ？」イシェは眉間に皺を寄せた。「あの塔は危険だ。崩落するリスクもあるし、何よりもヴォルダンが遺した武器庫なんて、ただの都市伝説じゃないのかしら？」
「そんなことないって！俺の直感だ！」ラーンは自信満々に胸を張った。「それに、テルヘルさんが高額な報酬を提示してくれたんだから、何かあるに決まってるだろ？」
イシェはため息をついた。ラーンの無茶な行動にはいつも付き合わされる。だが、彼を止めることはできない。そして、どこかでラーンの「無敵」のような楽観性に惹かれる自分もいる。
テルヘルは冷静に地図を広げた。「塔の構造は複雑だ。安全を確保するためにも、慎重に進もう。」彼女の目は鋭く、まるで敵を睨むかのように光っていた。
3人は崩れかけた石畳を慎重に歩いた。埃っぽい空気が彼らを包み込み、朽ち果てた壁からは不気味な影が伸びる。ラーンの軽快な足取りとは対照的に、イシェは緊張した表情で周囲を見回していた。
塔の奥深くを進んでいくと、突然、床が崩れ落ち、ラーンは深い穴に転落した。イシェは悲鳴を上げたが、ラーンの姿はもう見えなかった。「ラーーン！」
「大丈夫だ！俺は無事だ！」ラーンの声が遠くから聞こえた。彼は立ち上がり、辺りを見回した。そこは広大な地下空間だった。天井から伸びる巨大な柱には、奇妙な文字が刻まれていた。そして、その中心には、金銀財宝が山積みにされていた。
「やった！大穴だ！」ラーンは興奮気味に叫んだ。イシェも息を呑んだ。確かにそれは想像を絶するほどの富だった。
その時、背後から冷たい声が響いた。「ここに来たか。」
振り返ると、そこにはテルヘルが立っていた。しかし、彼女の表情はどこか狂気に満ちていた。「この遺跡の真実は、お前たちには理解できないだろう。」
「テルヘルさん、何をするつもりだ？」イシェは恐怖で言葉を失った。
テルヘルはゆっくりと剣を抜いた。「この財宝は、ヴォルダンに復讐するための力を与えてくれるのだ」彼女の目は燃えるように輝き、「そして、お前たちはこの計画の一部なのだ。」