ビレーの朝の陽光は、まだ影のある遺跡の入り口を照らしていた。ラーンはいつものように寝坊し、イシェに起こされた。
「またかよ、ラーン！今日はテルヘルさんが待ってるんだぞ！」
イシェの声が、いつもより少し荒っぽかった。最近、テルヘルさんの依頼が増えてきて、報酬も増えていたため、イシェはビレーでの生活に希望を見出していたようだった。ラーンはあくびをしながら立ち上がった。
「わかったわかった。今日は大穴が見つかる予感がするぜ！ほら、イシェ、準備だ！」
ラーンの言葉にイシェはため息をついた。遺跡の中はいつもと変わらず、暗く湿っていた。無数の石造りの壁が、まるで無言の巨人が立ち並ぶように、彼らを包み込んでいた。テルヘルさんは入り口で待っていた。彼女の鋭い目つきが、遺跡の奥深くにまで届きそうだった。
「今日は、あの古代都市の遺跡だ。地図によると、中心部には巨大な祠があるらしい。そこには貴重な遺物、もしかしたら無数の財宝も眠っているかもしれない。」
テルヘルさんの言葉にラーンの目は輝いた。イシェは地図を広げ、複雑な通路を慎重に辿るルートを確認した。
「よし、準備はいいぞ！さあ、行こう！」
ラーンが先頭を切って遺跡の中へと進んでいった。イシェとテルヘルさんも後を追う。石畳の床を踏みしめる音だけが、静寂の中に響き渡っていた。
遺跡の奥深くを進んでいくうちに、壁には奇妙な文様が刻まれていることに気がついた。無数のシンボルが、まるで物語を語っているようだった。イシェは興味深そうに観察していたが、ラーンはそれよりも先に進むことに熱中していた。
「早く大穴が見つからなければ、今日の分まで飯は食えないぞ！」
ラーンの言葉にイシェは苦笑した。テルヘルさんは彼らをじっと見つめ、何かを思案しているようだった。
やがて、彼らは巨大な扉にたどり着いた。扉には、無数の宝石が埋め込まれており、その輝きはまるで夜空の星を映し出していた。
「ここだ！これが噂の祠だ！」
ラーンは興奮して扉を開けようとしたが、テルヘルさんが手を止めた。
「待て、ラーン。まずは周囲をよく確認する必要がある。」
テルヘルさんは扉の周りを慎重に調べ始めた。イシェも緊張した表情で周囲を見渡していた。すると、扉の上部にある小さな石版に刻まれた文字を発見した。
「これは...警告文だ！」
イシェの声が震えていた。
「この遺跡には危険が潜んでいる。無数の罠が仕掛けられており、侵入者を迎える準備ができているらしい。」
イシェの言葉にラーンの顔色が変わった。テルヘルさんは冷静に状況を判断していた。
「だが、諦めるわけにはいかない。」
テルヘルさんは剣を抜き、扉に向かって歩み始めた。
「危険な道だとしても、我々は進む必要がある。目標を達成するためには、あらゆる困難を乗り越えなければならない。」