ビレーの朝焼けは、いつもより薄く、灰色がかっていた。ラーンはイシェを起こすために、いつものように彼女の寝顔を見ながらため息をついた。
「起きろよ、イシェ。今日はテルヘルが待ってるんだぞ。」
イシェはゆっくりと目を覚まし、顔をしかめた。「またあの遺跡か…」
ラーンの無邪気な笑顔に反して、イシェの心は沈んでいた。最近、テルヘルの依頼が増えてきたのだ。それはつまり、危険な遺跡を探索する回数が増えるということだった。
「大穴」を見つけたいラーンは、テルヘルの高額な報酬に喜び、危険を顧みない。しかし、イシェは冷静に状況を見極める必要があった。テルヘルが本当にヴォルダンに復讐したいのか、それとも彼らを道具として利用しているのか。そして、彼らの未来は一体どうなるのか。
今日も彼らは遺跡へと向かった。遺跡の入り口には、いつもよりも深い影が落ちていた。まるで、彼らの行く手を阻もうとするかのように。
「何か変だな…」イシェは不安そうに呟いた。ラーンの顔も少し曇っていた。しかし、彼らには後戻りできない。テルヘルに約束したのだ。
遺跡内部は暗く、湿気を帯びていた。足元の石畳は苔むしており、滑りやすかった。壁には古びた文字が刻まれており、その意味は誰にも解けなかった。
「ここ…どこかで見たことがあるような…」イシェは眉間に皺を寄せた。彼女は不吉な予感を感じていた。
その時、突然、地面が揺れた。ラーンが咄嗟にイシェを抱きかかえ、転げ込んだ。遺跡の奥から轟音が響き渡り、石塵が舞い上がった。
「なんだこれは…」ラーンの顔は蒼白になっていた。イシェも同様に恐怖を感じていた。
テルヘルは冷静に状況を分析し、指示を出した。「あの崩落地点に向かおう。何かあるかもしれない。」
彼らは崩れた壁の隙間から中へと進んだ。そこには、予想外の光景が広がっていた。
広大な部屋の中央には、巨大な水晶体が輝いていた。その水晶体からは、不思議な光が放たれており、部屋全体を照らしていた。
「これは…！」イシェは息を呑んだ。
ラーンの目は夢中になって輝き、テルヘルは冷徹に水晶体を見つめていた。しかし、その水晶体の光は、まるで彼らの未来を映す鏡のように、無常な運命を予感させるものだった。