ビレーの朝陽は、まだ影の深い遺跡へと届かなかった。ラーンは、イシェがいつもより早く準備をしていることに気づき、眉をひそめた。「今日は何かあるのか?」
「ええ、少しだけ急いでいるのよ。」イシェは目を細め、荷造りを続けた。いつも冷静な彼女の声にわずかな緊張が混じっていた。「テルヘルから連絡があったわ。今日は特別だそうよ。」
ラーンの心はざわついた。テルヘルは謎が多い女性だった。ヴォルダンへの復讐を誓うという彼女の言葉は真実なのか、それとも嘘なのか。彼女の目的は何なのか。ラーンには理解できなかった。ただ、彼女が持つ力と、遺跡に眠る危険な秘密への執念を感じ取ることができた。
遺跡の入り口でテルヘルが待っていた。今日はいつもとは違う。黒いマントを身にまとい、鋭い眼光で三人に目を向け、何かを告げようとしたその時、地面が激しく振動し始めた。
「何だこれは!?」ラーンの叫びは風と共に消えていった。遺跡の奥から、不気味な光が漏れてきた。イシェは恐怖を隠せない様子を見せながらも、ラーンの目をじっと見つめた。「無垢な心を持つ者だけが真実を知る。」彼女の言葉はまるで予言のようだった。
テルヘルは剣を抜いた。「準備はいいか?」
ラーンは深く息を吸い込み、剣を握りしめた。イシェの視線を感じながら、遺跡へと踏み出した。彼らには、無垢な心を持つ者だけが知り得る真実が待っていたのかもしれない。