「よし、行こう！」ラーンの豪快な声がビレーの朝霧を切り裂いた。イシェがため息をつきながら後を続けた。今日も遺跡だ。ラーンはいつも大穴を見つける夢見ているが、イシェにはそんな夢よりも現実的な不安の方が大きかった。
「あの遺跡って本当に安全なの？」イシェが不安げに尋ねると、ラーンはニヤリと笑った。「大丈夫だって、テルヘルが言うんだろ？それに、今回は報酬がいいらしいぞ！」
テルヘルは今日もいつものように冷酷な表情で二人を睨みつけている。彼女の目的は遺跡の遺物ではなく、ヴォルダンへの復讐にあることをイシェは知っていた。そのために彼女はどんな手段もいとわないだろう。
遺跡の入り口は、まるで獣の口のように大きく開いていた。内部は薄暗い迷路のような構造で、不気味な静けさに包まれていた。ラーンの足音が石畳にこだまして響き渡る。イシェは緊張した面持ちで周囲を警戒しながら歩を進めた。
突然、ラーンが立ち止まった。「おい、何かあったのか？」イシェが尋ねると、ラーンの指が暗い奥の方を指さした。「見てみろよ…」
そこには、まるで炎の精霊が燃え盛るように赤く輝き、奇妙な模様が刻まれた石柱があった。イシェは息をのんだ。それは遺跡に眠る謎の一つに違いない。
テルヘルは石柱に近づき、その表面を慎重に触れた。「これは…」彼女は呟いた。「ヴォルダンが欲しがるもの…。」
その時、石柱から炎が噴き出した！ラーンは反射的に剣を抜き、イシェは身をかわした。炎は天井にぶつかり、遺跡全体を赤く染めた。恐怖と興奮が同時にイシェの心を駆け巡った。
「これは罠だ！」ラーンの声が響いた。「逃げろ！」
三人は慌てて石柱から離れ、暗い迷路の中を走り出した。後ろから炎が迫ってくる音が聞こえる。イシェは必死に足を動かしたが、炎の熱を感じ始めた。
その時、ラーンが振り返り、炎に向かって飛び込んだ！「行くぞ、イシェ！」彼の叫び声が響き渡った。イシェは一瞬躊躇した。しかし、ラーンの言葉と炎に照らされた彼の姿を見て、恐怖を振り切って彼を追いかけた。