灼熱の太陽が容赦なく大地を焦がすビレーの朝。ラーンはいつものようにイシェを起こそうとしたが、今日は何か様子が違った。イシェは蒼白な顔でベッドから起き上がらず、額には冷や汗が滲んでいた。「どうした?イシェ、具合でも悪いのか?」ラーンの心配をよそにイシェは小さく呟いた。「夢を見たんだ...悪夢だ。灼熱の砂漠、炎に包まれた遺跡...そして...」イシェは言葉を濁す。ラーンはイシェの表情から何か重大なことがあったと感じたが、その時はまだ理解していなかった。
ビレーの広場ではテルヘルが待ち構えていた。「今日は特に危険な遺跡だ。報酬も倍にする。二人とも覚悟しておけ。」テルヘルの言葉にラーンはいつものように闘志を燃やすが、イシェは顔色が悪く、何かを恐れているように見えた。
灼熱の太陽の下、遺跡へ向かう道のりは険しかった。乾いた風が吹き荒れ、喉を締め付けるような暑さだった。ラーンの軽快な足取りとは対照的に、イシェは一歩も遅れることなく、苦しそうに息を切らしている。「大丈夫か?イシェ、無理しすぎないで」ラーンが声をかけると、イシェは小さく頷くだけだった。
遺跡の入り口には、まるで炎が燃え盛るように赤い紋章が刻まれていた。テルヘルは怪訝そうに「これは...見たことがない紋章だ。何か不吉な予感がする」と呟いた。それでも、高額な報酬に目が眩んだラーンは、イシェの心配をよそに遺跡へと足を踏み入れた。
内部は薄暗く、不気味な静けさだった。灼熱の太陽光が差し込み、壁を赤く染める。そこはまるで地獄の入り口のようだった。イシェは背筋がゾッとするような感覚に襲われた。「何か...変だ...」イシェの声が震えていた。ラーンがイシェの手を取ると、彼女の指先は冷たかった。
遺跡の奥深くには、巨大な祭壇がそびえ立っていた。祭壇の上には、輝く赤い宝石が置かれていた。ラーンの目は金貨に変わっていくように輝き、テルヘルは「あれが...伝説の『灼熱の心臓』だ!」と声を上げた。
しかし、その時だった。祭壇から赤い光が放たれ、遺跡全体を包み込んだ。灼熱の炎が吹き上がり、ラーンとイシェを襲い掛かる。イシェは恐怖で目を閉じ、ラーンの叫び声が聞こえた。「イシェ!」その瞬間、イシェは夢の中で見た光景が蘇り、恐ろしい真実を知ったのだ。この遺跡は、灼熱の呪いを受けた場所であり、宝石に触れた者は永遠に炎に囚われるのだという。