ビレーの朝焼けはいつもより薄かった。ラーンが目を覚ますと、イシェがすでに準備を終えていた。 今日はテルヘルが指定した遺跡に向かう予定だ。 いつも以上に緊張感が漂っていた。
「何かあったのか？」
ラーンの問いにイシェは小さく頷く。「テルヘルの様子が変なんだ。いつもより口数が少ないし…」
確かに、テルヘルは今日から少し様子が違った。 目を輝かせながら遺跡探しの話をしていたのは、遠い日のことのように思えた。 今日の依頼は特に危険な場所での探索だ。 過去の記録によると、そこには強力な魔物が封じられているという噂があった。
「大丈夫だよ、イシェ。」ラーンはイシェの肩に手を置く。「俺たちがいるんだからな。」
イシェは小さく頷き、三人はビレーを出発した。 遺跡までの道は険しく、荒れ果てた風景が続く。かつて栄えた都市の名残だけが、今や灰燼と化した土地に残るのみだった。
遺跡の入り口に辿り着くと、テルヘルは既に待っていた。 彼女はいつもより表情が硬く、手には奇妙な石碑を握りしめていた。
「これは何だ？」ラーンの問いに、テルヘルは静かに答えた。「ヴォルダンに奪われたものの一部だ。 この遺跡には、それを取り戻すための鍵がある。」
彼女の目は燃えるような炎で輝いていた。 ラーンとイシェは互いに言葉を交わさず、ただテルヘルの後ろをついていった。 彼らもまた、灰燼の中から何かを取り戻そうとする者だった。