「よし、今回はあの廃墟の奥深くに潜ってみようぜ！」ラーンが拳を握りしめると、イシェはため息をついた。「またそんな危険な場所？地図もろくもないのに、本当に大丈夫なのかしら？」
「大丈夫だって！俺たちにはイシェがいるんだから。お前が慎重に道案内してくれれば、どんな難所も突破できるぜ！」ラーンは自信満々に笑ったが、イシェは彼の言葉の裏にある不安を察知した。最近、ラーンの行動が以前より荒く、無謀になっているように思えたからだ。
「テルヘルさん、本当にこの依頼を受けていいんでしょうか？」イシェはテルヘルに尋ねた。「あの廃墟は危険だと噂されています。しかも、ヴォルダン軍が動き出したという情報もあるんです。」
テルヘルは淡々と答えた。「私はその噂を信用しない。ヴォルダン軍がここに来る理由はない。それに、この遺跡には私が求めるものがある。リスクを冒す価値がある。」彼女の目は鋭く、決意に満ちていた。イシェは彼女の強い意志に押されるように頷いた。
廃墟の入り口付近では、錆びついた鉄製の門が崩れ落ち、その向こうには闇が広がっていた。ラーンの背中にそっと手を当てると、イシェは彼を励ました。「気をつけてね、ラーン。」ラーンは深く頷き、剣を手に取った。
彼らは廃墟の中へと踏み入れた。薄暗い通路を進んでいくと、壁には奇妙な模様が刻まれており、時折不気味な音が響いてきた。
「ここ、なんか変だぞ…」ラーンの声が震えていた。「何かいる気配を感じるんだ。」イシェは緊張感を増しながら周囲を警戒した。すると、奥からかすかな光が漏れてきた。
「あれが灯台か？」イシェが呟くと、ラーンは興奮した様子で走り出した。「行ってみようぜ！もしかしたら大穴が見つかるかも！」
しかし、その瞬間、床が崩れ始め、ラーンは深い闇の中に落ちていった。イシェが驚いて駆け寄ろうとした時、背後から声が聞こえた。「待て、イシェ。彼を助けに行く必要はない。」テルヘルが冷たい目で言った。「あの男には、もう用はないのだ。」
イシェは恐怖と怒りで体が震えた。ラーンの叫び声だけが、崩れ落ちる廃墟の中でこだましていく。そして、遠くで灯台の光が、まるで嘲笑うように輝いていた。