ラーンの大 hammer が遺跡の壁を叩きつけた音だけが、埃っぽい空間に響く。
「よし、これで開いたぞ!」
彼は得意げに笑ったが、イシェは眉間に皺を寄せていた。
「また無駄な力技か。あの扉、錆びてただけだろう。」
ラーンの背後からテルヘルが冷めた声で言った。「時間と労力を無駄にするな。遺跡の奥へ進むのが先だ」
イシェは頷き、慎重に崩れた扉をくぐって奥へと進んだ。薄暗い通路は湿気を帯びており、壁には不規則に苔が生えていた。遠くから、かすかな熱気を感じ取ることができた。
「何か臭うな…」ラーンが鼻をクネクネさせた。「なんか…硫黄の匂いがするぞ」
イシェは一瞬、言葉を失った。硫黄の匂いといえば…。
「ここ…もしかして、火山に近い場所なの?」
テルヘルは静かに頷いた。「そうだろう。この遺跡は、かつてヴォルダンが支配していた地域に存在したと考えられる。彼らは火山を利用した高度な技術を持っていたという記録が残っている」
ラーンの顔色が変わった。「火山か…。あの灼熱の地獄だぞ…」
イシェは彼の不安を察し、軽く肩を叩いた。「大丈夫さ。僕たちにはテルヘルがいるじゃない。彼女ならどうにかしてくれるはずよ。」
テルヘルの表情は硬いままだった。彼女は Volcan と呼ばれるヴォルダンの特殊部隊に所属していた。火山地域での活動に長けており、その知識と経験は今まさに必要とされている。
「遺跡の奥には、ヴォルダンが隠した何かがあるはずだ」テルヘルは言った。「そして、それが僕たちの目標だ。」
彼女がそう言うと、ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。彼らはまだ、この遺跡の真の姿、そしてテルヘルの真の目的を知らない。しかし、火山が生み出す熱気と危険に満ちたこの遺跡の中、彼らの運命は交差していくことになるだろう。