「おい、イシェ、あの石像の足元に何かあるぞ!」ラーンの低い声がビレーの湿った地下空気を切り裂いた。イシェは懐中電灯の光を石像に向けた。確かに、石像の基底部にわずかな隙間がある。「何だろう?また罠か?」イシェは慎重に近づき、隙間を覗き込んだ。
「なっ、何だこれは…」イシェの呟きにラーンも近づいてきた。隙間から覗くのは、錆び付いた金属製の箱だった。箱の上には複雑な紋章が刻まれており、どこかで見たような気がした。
「これは…もしかして?」テルヘルは少し興奮気味に言った。「古代ヴォルダン王家の紋章だ。この遺跡はヴォルダンとの関連があるのかもしれない…」
ラーンの表情が曇る。「ヴォルダンか…。あの国とは縁がない方がいいぞ」
イシェは箱を慎重に持ち上げた。「でも、こんなところに何で?」
「さあ、開けてみようじゃないか!」ラーンは興奮気味に言った。しかし、テルヘルが手を止めた。「待った。まずは安全確認だ。この箱には何か仕掛けがあるかもしれない」。
テルヘルは慎重に箱の周囲を調べた。すると、箱の側面に小さなボタンを発見した。「これだ!開けるためのボタンだろう」。テルヘルはゆっくりとボタンを押した。
箱から「カタン」という音が響き、ゆっくりと蓋が開いた。中には、金貨や宝石がぎっしり詰まった様子だった。「やった!大当たりだ!」ラーンは大喜びで叫んだ。イシェも思わず目を丸くした。
「よし、これでしばらくは困らねえな!」ラーンの顔が満開に笑った。その時、後ろから低い声が聞こえた。「待て!」
振り返るとそこには、黒ずくめの男が立っていた。彼の顔には深い傷跡があり、片目は失明していた。「お前たち…遺跡を荒らす者どもだ!この箱は俺のものだ!」男は剣を抜くと、ラーンに向かって襲いかかった。
「何だと!? 」ラーンの驚きの声と同時に、イシェはテルヘルに叫んだ。「逃げろ!」