ラーンが遺跡の入り口で深呼吸をしていると、イシェが眉間にしわを寄せて言った。「今回は本当に危険な場所らしいよ。あの噂は本当だとしたら…」
「大丈夫だ。俺たちが一緒ならなんとかなるさ！」ラーンの豪快な声はいつも通りだったが、イシェは彼の背後に広がる深い緑の峡谷をじっと見つめていた。激流が轟音を立てて岩肌を削りながら下っていた。その光景はまるで巨大な蛇の牙のように見えた。
「あの蛇の牙に飲み込まれる前に、宝物を手に入れなきゃね」テルヘルが冷めた声で言った。「準備はいいかい？」
ラーンの表情は一瞬曇ったが、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。「もちろん、待たせているぞ！」
彼らは遺跡へと続く洞窟に入った。内部は薄暗く湿っており、不気味な静けさに包まれていた。壁には奇妙な模様が刻まれており、イシェは緊張しながらそれらを指さして言った。「これは…古代の文字だ。何か警告を意味しているのかも…」
「そんなこと気にすんな！宝が待ってるぞ！」ラーンの言葉に押されるように、彼らは奥へと進んでいった。しかし、進むにつれて洞窟の空気が重くなっていき、彼らに不吉な予感を抱かせた。
やがて、彼らは広大な地下空間に出た。そこには巨大な石像が立ち並び、中央には輝きを放つ宝箱があった。ラーンの目はその宝箱に釘付けになった。だが、イシェは何かを感じ取ったように振り返り、背後から聞こえる水の音に耳を傾けた。
「あの音…！」イシェの声が震えていた。
その時、洞窟の天井から大量の水が流れ込み始めた。それはまるで天から注ぎ込まれる激流のように、あっという間に地下空間を満たしていった。
「逃げろ！」テルヘルの声が響き渡るも、すでに遅かった。激しい水流に飲み込まれ、3人は奈落へ落ちていくように洞窟の奥へと押し流されていった。