ラーンの大剣が遺跡の壁を叩き割った。石塵が舞い上がり、イシェは咳き込んで顔をしかめた。
「また暴走か?計画立ててから入ればこんなことにならないって!」
イシェの叱責もラーンには届いていない。彼は興奮した瞳で崩れた壁の向こう側を見つめている。
「ほら!何かあるぞ!」
その奥に広がるのは、漆黒の床と、中央にそびえ立つ巨大な石碑だった。ラーンは石碑に向かって駆け寄り、手をかざす。
「これは…!」
彼が言葉を失うほど、石碑からは強烈な魔力を感じ取ることができる。イシェも息を呑んだ。だが、その興奮とは別に、彼女には不吉な予感がした。
その時、背後から冷酷な声が響いた。
「素晴らしい発見ですね。まさに私が探していたもの…」
ラーンとイシェは振り返ると、そこにはテルヘルが立っていた。彼女の瞳は燃えるように赤く光り、その表情には狂気を孕んだ激情が渦巻いていた。
「お前たちは…!」
ラーンの怒号が空虚に響き渡る。テルヘルは石碑に手を伸ばし、低く呟いた。
「これで、全て終わり…」
石碑から放たれた黒曜色の光が、三人の影を飲み込んでいく。