ビレーの海岸線は、夕暮れの赤く染まる空と相まって、まるで燃え盛る炎のようだった。ラーンは、イシェがいつも眺めている風景とは違う方向を見つめていた。彼の視線は、水平線に沈む太陽ではなく、遠くヴォルダンとの国境付近で立ち上る煙の柱に向けられていた。
「あの煙は一体何だ？」
イシェの問いかけに、ラーンは肩をすくめた。「知らない。もしかしたら、またヴォルダンの兵が動き出したのかもしれないな」。
イシェは眉間に皺を寄せた。「最近、国境付近で何かが起こっている噂を耳にしたわ。緊張感が高まっているって」。
ラーンの心には、どこか落ち着かない感覚が渦巻いていた。いつもは活気に満ち溢れていたビレーの街も、どこか重苦しい空気に包まれているようだった。
「おい、二人は何をしているんだ？」
テルヘルの鋭い声が、二人の背後から聞こえた。彼女は、いつものように高慢な態度で彼らを睨みつけていた。
「テルヘルさん、今日はもう遺跡探索は終わりにしませんか？」イシェが尋ねた。
テルヘルは小さく笑った。「まだだ。今日こそ、あの遺跡の奥深くに眠る宝を見つけ出す。お前たちは準備ができているのか？」
ラーンの胸には、冒険への期待と不安が入り混じっていた。潮騒が聞こえる海岸線に立ちながら、彼は何か予感を覚えた気がした。
「よし、行くぞ！」