「よし、今回はあの崩れた塔だ。噂では奥に未開の部屋があるらしい」ラーンが興奮気味に話した。イシェは地図を広げながら眉をひそめた。「あの塔は危険だって聞いたことがあるよ。天井が不安定で、潮解が進んでいて崩落する可能性もある」
「大丈夫、大丈夫!俺が行くから」ラーンは自信満々に胸を張った。イシェはため息をつきながら、テルヘルに視線を向けた。「どうする?あの塔に入るつもりか?」
テルヘルは鋭い目で地図を睨んでいた。「情報収集には価値がある。危険は承知の上だ」と、彼女は静かに答えた。
ビレーの港から少し離れた場所に、朽ちかけた塔がそびえ立っている。かつては監視塔として使われていたらしいが、今は崩れそうなほど荒廃していた。潮風が吹き荒れ、石造りの壁には白い塩がこびりついている。
3人は塔の入り口に立ち、一歩踏み入れた。内部は薄暗く、湿った空気が漂う。崩れた階段を慎重に登っていくと、天井から石灰がパラパラと落ちてくる。イシェは不安そうに後ろを振り返った。「本当に大丈夫か?この塔はまるで生きているみたいだ」
ラーンは気にせず先に進む。「そんなこと言わずに、早く奥へ進んでみようぜ!」
彼らは崩れた壁をよじ登り、狭い通路を進んでいった。やがて、奥に広がる未開の部屋を見つけた。部屋の中央には、巨大な石棺が置かれている。
「 Jackpot!これは大穴だぞ!」ラーンは興奮して叫んだ。
しかし、その時、床が大きく崩れ落ちた。ラーンの足元から石灰が渦巻き、深い闇へと吸い込まれるように、彼は下に落ちていった。
イシェとテルヘルは慌てて手を伸ばしたが、ラーンの姿はもう見えなかった。「ラーン!」イシェの叫びが塔に響き渡る。
「落ち着け、イシェ」テルヘルは冷静な声で言った。「今は彼を助けに行く時間はない。この部屋から脱出することが最優先だ」
2人は崩れた床の上で、深い闇の中に沈んでいくラーンの姿を見つめた。潮解が進む塔の中で、彼らはそれぞれの目的のために、そして仲間の命を救うために、危険な探索を続けることになる。