ラーンが遺跡の入り口に立ち尽くす。いつものようにイシェが彼を睨みつけている。「また迷ってるのか？」とイシェの声が響く。「いや、違うんだ。今回はなんか…違う気がするんだよな」ラーンの視線は、崩れかけた石畳の上を流れる水たまりに向いていた。そこに映るのは、ぼんやりと歪んだ自分の姿だった。
「違うって？何が違うんだ？」イシェの言葉は冷酷だった。「大穴が見つかるって期待してるんじゃないだろうな？」
ラーンの視線は水たまりから離れず、遠くを見つめているように見えた。「いや…」彼はゆっくりと口を開いた。「なんか…流れが変わった気がするんだよな。今までとは違う、何か大きなものを感じてるんだ」
イシェはため息をついた。「またそんなこと言って…」
その時、背後から冷たい声が聞こえた。「流れか…確かに、この国には今は大きな潮流が動いているようだ」
ラーンとイシェは振り返った。テルヘルが、いつものように冷静な表情で立っていた。「ヴォルダンとの関係、議会での対立、そして…」彼女は視線を遺跡の奥に向け、「眠りから覚めようとするものたち…すべてが交錯する、この地はまさに大きな渦の中にいる」
ラーンの目は輝き始めた。「そうか…確かに何かが始まりそうな気がする」彼は剣を握りしめ、再び遺跡の入り口を見つめた。イシェは彼の背中に手を当て、小さく頷いた。「わかったわ、ラーン。今回は、俺たちでこの流れに乗ってみよう」
テルヘルは冷酷な微笑みを浮かべながら言った。「そうだな。そして、その潮流を逆手に取って、我々の目的を果たすのだ」