ビレーの喧騒を背に、ラーンはイシェとテルヘルと共に森を切り抜け、遺跡へと続く小道を進んでいた。日差しが葉の間から差し込み、足元を踊る光と影が彼らを包む。
「今日の気温は高いな」ラーンの言葉に、イシェは眉間に皺を寄せた。「遺跡の中はもっと蒸し暑いかもしれない。準備はいいか?」
ラーンは軽く肩をすくめた。「大丈夫だ、イシェ。いつも通りだぞ」。テルヘルは沈黙を守りながら先頭を歩いていた。彼女の背中に、深い憎悪が宿っているのは、ラーンとイシェにはよくわかった。
遺跡の入り口に近づくと、石造りの壁に刻まれた奇妙な紋章が目に入った。ラーンの顔色が少し曇る。「あの紋章…見たことがある気がするんだ」
イシェは冷静に言った。「過去に調査した記録には載っていない模様だ。念のため慎重に進もう」。テルヘルは深く息を吸い込み、石の壁に手を当てた。「この遺跡はヴォルダンが最も恐れるものと関わっている可能性が高い。我々は潜入し、その真実を明らかにする必要がある」
彼女の目は鋭く光り、決意に満ちていた。ラーンとイシェは互いに頷き合った。彼らはテルヘルの言葉の重みを理解していた。この遺跡は単なる探検ではない。ヴォルダンとの戦いに繋がる鍵となるかもしれないのだ。
三人は息を潜め、遺跡へと足を踏み入れた。暗闇の中に、彼らの冒険が始まった。