「よし、ここだな」
イシェが地図を広げ、指を置いた場所を確認した。ラーンは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「また薄暗い洞窟か? 今日の遺跡はイシェの趣味じゃないのか?」
「そんなこと言わないで。ここは以前から調査していた遺跡で、貴重な遺物がある可能性が高いんだ」
イシェがそう言うと、ラーンの顔色が少し明るくなった。
「そうか、ならいいな。宝探しのワクワク感がないとやる気出ないぜ!」
テルヘルは二人を見下ろすように言った。
「宝探し? そんな甘い考えで遺跡に潜るんじゃない。今回はヴォルダンに関する情報を得ることが目的だ。遺物などどうでもいい」
ラーンの顔色が再び曇ったが、イシェは冷静に言った。
「わかっています。テルヘルさんからの依頼を優先しますから。でも、もし何か見つけたら報告する義務も忘れずに。」
テルヘルは小さく頷き、洞窟の入り口へと歩を進めた。
薄暗く湿った空気の中、三人は慎重に足を進めた。壁には古びた壁画が描かれており、かすかに光る文字が見えた。イシェは興奮気味にメモを取り始めた。
「これは…ヴォルダンに関する記録か? 興味深い」
ラーンはイシェの熱意とは対照的に、不機嫌そうに言った。
「早く宝探しの場所に行きたいんだけどな…」
その時、洞窟奥から低い唸り声が聞こえてきた。ラーンとイシェが顔を合わせると、同時に恐怖を感じた。
「あれは…?」
テルヘルは剣を抜き、周囲を見回した。
「伏兵だ! すぐに隠れるんだ!」
三人は近くの岩陰に身を潜めた。激しい足音が近づいてくるのが聞こえる。息を殺し、敵の動きを伺う。
その時、洞窟の入り口が明るく照らされ、複数の影が姿を現した。ヴォルダンの兵士たちだ。彼らは剣と盾を持ち、警戒をしながら洞窟の中をくまなく探している。
「まさか…ヴォルダン軍がここに…」
イシェは恐怖で声が震えていた。ラーンは握りしめた拳を強く締め、「逃げるぞ!」と叫んだ。
だが、テルヘルは彼らを制止した。
「まだだ。ここはヴォルダンの兵士たちが潜伏している場所ではないはずだ。何か別の目的があるはずだ…」