ビレーの朝は薄暗い空の下で始まった。ラーンが目を覚ますと、イシェがいつものように遺跡探しの準備をしていた。今日はテルヘルからの依頼だ。報酬も高く、危険な遺跡だと聞いていた。
「イシェ、今日の依頼、大丈夫かな?あの遺跡、噂じゃ呪われてるって話もあるぞ」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。「またそんな話を…」と呟きながら、地図を広げた。
「呪いなんてないわよ。ただの迷信ね。それにテルヘルが言うなら、何か価値のあるものがあるはずだ。今回は特に慎重に行こう。ラーンは気を引き締めて」
イシェの言葉にラーンも頷いた。テルヘルはいつも冷静で、計画的な行動をとる女性だ。彼女を信頼しているし、彼女の目的にも共感できる部分があった。だが、今回の依頼には何か不安なものを感じていた。
遺跡への道中、雨が降り始めた。空から滴り落ちる雨粒がラーンの頬に冷たい感触をもたらした。イシェは小さな雨宿りの場所で立ち止まった。「少し休もう」と呟きながら、地図を広げた。ラーンはイシェの肩越しに、遠くの霧の中に浮かぶ遺跡の姿を眺めた。
「あの遺跡…何か嫌な予感がする」とラーンがつぶやくと、イシェは小さく頷いた。
遺跡への道は険しく、雨でぬかるんでいた。彼らは慎重に進み、ついに遺跡へとたどり着いた。遺跡内部は薄暗く、湿った空気でいっぱいだった。壁には何やら不気味な文字が刻まれており、ラーンの背筋を寒気がするほどだった。
「何か…感じる…」イシェが呟いた。彼女は手を伸ばし、壁に描かれた文字に触れた。その瞬間、部屋の奥から冷たい風が吹き出し、床に滴り落ちる水音が響き渡った。
「これは…!」ラーンの言葉は途絶えた。目の前に広がるのは、広大な地下空間だった。そこには無数の石棺が並べられており、空気が重く、不気味な光が漂っていた。
テルヘルが駆け寄ってきた。「ついに…見つけた!ここにあの遺物があるはずだ!」と彼女は興奮気味に言った。だが、その瞬間、石棺の一つから黒い影が立ち上がり、彼らに襲いかかってきた…。