「よし、今日はあの遺跡だな!」 ラーンが地図を広げ、指さす方向には険しい山の斜面に開いた入り口があった。イシェは眉間にしわを寄せながら地図を確認した。「また危険な場所を選んだじゃないか。あの遺跡は崩落箇所が多いって聞いたぞ」。
「大丈夫だ、大丈夫!俺が先頭を切って道を開くから」ラーンは豪快に笑うが、イシェは彼の無謀さにいつも不安を感じていた。
「よし、準備はいいか?」テルヘルが鋭い視線で二人を見据えた。「あの遺跡には貴重な遺物があると情報が入っている。今回は大穴が見つかるかもしれない」
彼女の言葉にラーンは目を輝かせた。イシェも内心では期待を禁じえなかった。彼らはビレーの小さな宿屋から出発し、険しい山道を進んだ。滝壺へ注ぎ込む激しい流れを横目に慎重に進む。道は急峻で崩落箇所も多く、イシェは常に危機感にさいなまれていた。
「ここか!」ラーンが入り口を発見すると、興奮気味に駆け込んだ。そこは薄暗く湿った洞窟だった。イシェは後ろ髪を引かれる思いだったが、テルヘルの冷たい視線を感じ、仕方なく彼らに続く。
洞窟は奥へ進むにつれて狭くなり、天井からは水が滴り落ち、足元はぬかるんでいた。ラーンの不注意から石が崩れ落ち、イシェが慌てて身をかわす。その時、後ろからテルヘルが低い声で言った。「気をつけろ、罠があるぞ」。
イシェは振り返ると、ラーンが足をとられて転倒寸前だった。テルヘルが素早く手を伸ばし、ラーンの腕をつかんで引き上げた。イシェは胸を撫でおろした。
「危ないところだったな。ここは本当に危険だ」イシェは不安げに言った。しかし、ラーンとテルヘルはすでに奥へと進んでいく。イシェは彼らについていくしかなく、後ろ髪を引かれる思いで洞窟の奥深くへと足を踏み入れた。